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“蛙と兎”が走り出す—やまむらともよ、静岡発の現代絵師と挑戦

By Sophia Bowman
“蛙と兎”が走り出す—やまむらともよ、静岡発の現代絵師と挑戦
“蛙と兎”が走り出す—やまむらともよ、静岡発の現代絵師と挑戦
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🎵 “蛙と兎”が走り出す—やまむらともよ、静岡発の現代絵師と挑戦

静岡の街を歩くと、ふと目に入る“ゆるいのに、妙に記憶に残る”キャラクターがある。やま むら ともよの代表作は、独自キャラクター「かえるのる〜くん」。加えて、歌川広重の「東海道五十三次」を現代の視点で描き直したシリーズ「蛙と兎の東海道五十三次」で存在感を広げてきた。単なるイラストの枠を超え、商店街や企業とのコラボでも動きが目立つ。

やま むら ともよは静岡県焼津出身のイラストレーター。キャラクター「かえるのる〜くん」を軸に、商店街・企業とのコラボやイベントを展開する。さらに広重の「東海道五十三次」をモチーフにした「蛙と兎の東海道五十三次」(2015年〜)で注目を集め、2025年には静岡市の広重美術館での展開も話題になった。

項目 要点
名前 やま むら ともよ
出身 静岡県焼津
代表キャラクター 「かえるのる〜くん」
代表シリーズ 「蛙と兎の東海道五十三次」(2015年〜)
関連展開(注目) 2025年:静岡市東海道広重美術館で同時展開
企業/交通 2023年〜:小田急電鉄「もころん」子育て応援キャラクターに参画

静岡・焼津発の“街に溶ける絵”——やま むら ともよの起点

やま むら ともよの仕事は、静岡の土地感と切り離せない。静岡県焼津出身という背景は、作品のテーマ選びや発信の仕方にもにじむ。派手な演出ではなく、手に取れる距離の“かわいさ”で、人を立ち止まらせる設計があるからだ。

その中心にあるのが、独自キャラクター「かえるのる〜くん」。この存在が面白いのは、キャラクターが壁の中に閉じず、商店街や企業といった“現場”へ出ていく点にある。グッズ化だけでなく、イベントと結びつくことで、絵がそのまま地域の会話になる。絵師が作るのは、作品そのものだけではない。人の動きや空気の変化も含めて整えていく。

「蛙と兎の東海道五十三次」——広重を現代へ引き寄せる視点

やま むら ともよが次の段階へ進んだのは、「蛙と兎の東海道五十三次」だ。2015年から制作が始まり、歌川広重の名作「東海道五十三次」をモチーフにしている。ここで重要なのは、単なる“似せて描きました”ではないこと。広重が残した情報の密度、旅の気配、視線の置き方。その骨格を引き受けたうえで、現代の観客が自分の生活に引き寄せられるよう、動物たちの存在感で物語を組み直している。

広重の「東海道五十三次」は、江戸時代に“旅の地図”のような役割も担ってきた作品群として知られる。やま むら ともよのシリーズは、その旅の記憶を“自分ごと”に変える工夫がある。蛙や兎といった親しみやすいキャラクターが、宿場町の空気や季節感を受け止め直す。結果として、古典が遠いものではなく、現在の景色に接続される。

2015年以降、シリーズが積み上げたもの

2015年に始まってからの時間は、単発の企画では得られない強さになる。シリーズ形式にすることで、描き方の精度だけでなく、テーマへの理解も深まる。宿場ごとに違う表情をどう受け止めるか。動物の“間合い”をどう調整するか。そうした積み重ねが、見続けるほどに輪郭を持つ。

2025年の静岡——広重美術館での注目が示す“地域文化の拡張”

やま むら ともよの評価が一段と広がったのは、2025年の動きだ。静岡市東海道広重美術館で「蛙と兎の東海道五十三次」に関する同時展開があり、注目を集めた。美術館という場は、作品の“格”を上げる場所ではあるが、同時に“対話”を求める場所でもある。

ここで意味を持つのは、広重という巨匠の文脈に、現代の作り手がどう割り込んでいくかという点だ。やま むら ともよは、古典の力を借りるだけで終わらない。動物キャラクターと旅の構図を結び直し、観客が自分の時間で作品を理解できるようにしている。結果として、郷土の名所に“新しい読み方”が生まれる。

展示が呼ぶのは観光だけじゃない

観光に役立つのは確かだ。ただ、それ以上に、地域の記憶の更新に近い。展覧会をきっかけに「東海道五十三次」を手元で再確認する人が出てくる。スマホで見て終わりではなく、街の史料や地理に目が向く。そうした波が、地域の文化を“使う”側に回していく。

「かえるのる〜くん」とコラボの実務——絵が“商談”に変わる瞬間

やま むら ともよの特徴は、キャラクター制作が生活者の目線で進むことだ。商店街や企業とコラボする場合、作家の感性だけでは成立しない。販促の目的、来場者導線、季節イベントのタイミング。どれも決まっている。そこで必要になるのが、絵を“運用できる形”に落とし込む力だ。

「かえるのる〜くん」がグッズに落ちるとき、顔の表情や配色の役割が変わる。ポスターでは視認性が問われ、包装材では汚れやすさも考える。イベントでは人が写真を撮りたくなる“立ち位置”が必要だ。やま むら ともよは、こうした現場の要請を飲み込みながら、世界観を崩しにくい作りを続けている。

地域活性化に“効く”理由

キャラクターは、ただ愛されるだけでは不十分だ。人を動かす導線が要る。やま むら ともよは、商店街の景色や企業の活動内容を読み替え、キャラクターがその役割を担えるようにする。だから、笑って終わらない。地域で起きる行動に結びついていく。

小田急電鉄の子育て応援キャラクター「もころん」へ——公的な用途で求められる配慮

やま むら ともよは、交通インフラの領域にも関わっている。2023年より、小田急電鉄の子育て応援キャラクター「もころん」のデザインに参画した。交通系のキャラクターは、対象が広い。子ども、保護者、通勤・通学の人たち。しかも、駅や車内など人の目につく場所で使われることが多い。

だからこそ、表情の読みやすさ、色の見え方、印刷物とデジタルでの再現性など、制作の条件が増える。やま むら ともよの強みは、絵柄の柔らかさを保ちながら、実務要件の中で崩れにくいデザインを出すことだ。キャラクターの“かわいさ”を、安心感のあるコミュニケーションへ変換している。

企業案件が作家性を薄めないか

企業案件では、作家の個性が薄まるリスクがある。それでも「もころん」のような仕事に入るのは、個性が“用途に耐える”からだ。絵が公共性を持ったときにこそ、世界観の芯が試される。やま むら ともよは、その芯が評価されている可能性が高い。

古典と現代の“橋渡し”をどう続けるか——やま むら ともよの作家戦略

やま むら ともよの仕事を見ていると、作家の戦略が読み取れる。古典の題材を扱うときは、細部まで“旅の空気”を再現する。一方で、日常の販促では、キャラクターの表情と使い勝手を優先する。

この二軸が噛み合うことで、活動の幅が広がる。美術館の展示で得られる“批評の場”の視点と、商店街や企業イベントで得られる“生活者の距離感”が、互いに影響し合うのだ。広重の線のように長く残るものと、店頭でふっと立ち止まる感覚。その両方を扱っている。

見られる場所が増えるほど、作品の意味も増える

制作の意味は、どこで見られるかで変わる。街中のポスターは“今日の気分”になる。展覧会は“明日の解釈”になる。やま むら ともよは、その切り替えを自然に行えるタイプだ。結果として、同じ作家名が、複数の読まれ方をする状態が生まれている。

今、注目される理由——「蛙と兎」から見える次の日本の絵の形

やま むら ともよが注目される背景には、単に作品が上手いだけでは説明しにくい要素がある。絵が“鑑賞”と